これからの住宅について

こんにちは。設計の菅原です。

 

今回ブログ、写真も無く文章ばっかりで、しかも長いです。

お暇なときに読んでいただければ幸いです。

 

業界では常識でも、一般の方々はあまり知らない…ということは色々ありますが、

「日本の住宅は先進国の中で断トツに性能が低い」というのもその一つです。

 

日本の家は優れているんじゃないの?と感覚的に思っている方が多いようですが、

実は、先進国どころか今や韓国や中国といったアジアの中でも

大幅に性能が劣っているのが現状です。

 

その結果として、冷暖房光熱費を無駄にしたり、

結露によるカビの発生で家が傷み、健康も害してしまい、

快適な暮らしをおくることができなくなってしまっています。

 

先進国は、住宅の【断熱性能】や【省エネ性能】について基準を定めています。

ドイツをはじめ日本以外の先進国では、

新築する際には省エネ基準への適合が義務化されています。

 

それに対して、日本ではいまだに基準への適合が義務付けられていません。

ということは、外気の影響をもろに受けるアルミの単板ガラスのサッシだったり、

申しわけ程度に設置された断熱材の家(何なら無断熱!?)であっても、

違法でもなく、当たり前のように建てられるわけです。

 

実はかなり前に日本でも、

「2020年までに省エネ基準への適合を義務化する」と言っていました。

新しい建物の法律もできて、

建物の用途や規模によって段階的に義務化されていくことになっていました。

実際、オフィスビル等の大型建築物は義務化が進んでいます。

 

ところが住宅については、なぜか義務化が見送られ続けています。

ハウスメーカーはじめ、省エネ基準へ対応できない住宅事業者が多く、

業界が混乱しかねない、というのがその理由のようです。

なので今は省エネ性能説明義務化のみに留まっています。

 

他の国よりもはるかに緩い基準であっても対応できないビルダーが多い、

これが日本の実情です。

 

ただ最近になって、住宅の省エネ性能の向上に向けた動きが活発になってきていて、

各種制度が今後変更されていくことが決まりつつあります。

 

2025年4月からは原則すべての新築住宅に対して省エネ基準適合が義務付けられます!

 

建築確認手続きの中で省エネ基準への適合性審査が行われるため、

基準を満たしていない住宅は建てられないことになります。

 

2025年度以降に求められるのは「省エネ基準」への適合ですが、

政府は遅くとも2030年までにすべての新築住宅について

「ZEH基準」の省エネルギー性能の確保を目指しているようです。

この辺りは長くなるのでいつかまたお話しします。←もう長い

 

また東京都では【東京ゼロエミ住宅】という都独自の基準を設け、

エネルギーロスの少ない家を新築することで

最大210万円の補助金を受けられる制度があります。

https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/home/tokyo_zeroemission_house/gaiyou

 

その為には高い断熱性能の断熱材や窓を用いたり、

省エネ性能の高い住宅設備やエアコンなどを取り入れないといけないので、

建築費自体は割高になりますが、その分快適で健康的な暮らしができます。

さらに補助金210万円はえぐい。

 

少し前までは東京都でもこのレベルをこなせるビルダーは少なかったようですが、

最近はYouTube等でも住宅性能に関する情報が発信され始め、

住宅性能の重要性に気づいたユーザーが増えたこともあり、

対応できる会社が増えてきたようです。

 

ちなみにこの【東京ゼロエミ住宅】の最高水準である水準3

ecomoでも対応可能です!すでに一棟やってます!

神奈川県の会社で、東京ゼロエミ対応の会社。これはレアです!(急に宣伝)

 

【東京ゼロエミ住宅】の省エネ基準は、今年10月から更に強化されるようです。

新たに設定された「水準A」はさらに高断熱かつ省エネ化が必要とされます。

その分、補助金額も最大240万円。こりゃすげー。

他の先進国に遅れを取るまいとする東京都の本気度を感じます。

住宅事業者がどこまでついてこれるか、ふるいに掛けられるような気もします。

 

最後に、先程の【東京ゼロエミ住宅】で進めているお施主様とのやりとりで、

印象に残っているお話しを少し紹介します。

 

ご主人がベルギーのご出身で、ベルギーの家づくりについて教えていただきました。

ベルギーではサッシは高性能な木製サッシか樹脂サッシしかなく、

ガラスはトリプルガラスが一般的とのこと。

日本に初めて来たときに、アルミサッシで単板ガラスの窓を見て驚いたそうです。

 

内装についても隣国のドイツやフランスを交えて好みを聞かせてもらったり、

「フランクフルトキッチン」という考え方を教えていただいたり、

とても興味深かったです。

 

中でもすごく感銘を受けたのが、奥様がされていたお話で、

「ベルギーのお家は日本人が見ると未完成と思うような状態で引き渡すんですよ」

という言葉でした。

 

自分たちでできることはやるというのが主流らしく、

壁は下地のままで引き渡して、あとで自分たちで塗装し、

ドアノブもついていない状態にしておいて、

雑貨屋さんで気に入ったもの見つけて取り付ける、

というのが新築の考え方のようです。

 

それってめちゃくちゃ良いなーと思いました。

お引渡し時にすべて完成ではなくて、自分たちで手を加えて楽しむ。理想的です。

それでいて家自体は高性能で長く飽きのこない造り。

日本の住宅もそんな風になっていくといいなと思います。